私は最悪。(The Worst Person in the World) 

2026/05/17

【欧米映画】 Anders Danielsen Lie Renate Reinsve

 ネタばれあり!!!


【あらすじ】 JulieRenate Reinsve)は間もなく30歳になろうとしている。学生時代はそれなりに成績も優秀だったが、いまだ人生の方向性が定まらず、焦りと不安を募らせていた。グラフィックノベル作家として成功した、20歳近く年上の恋人AkselAnders Danielsen Lie)との良好な関係も、家庭を築きたいという彼の告白に、子どもに興味のないJulieは、かえって迷いが増すばかり。
 そんな時、たまたま紛れ込んだパーティ会場で、若い魅力的な男性EivindHerbert Nordrum)と出会い、新しい恋愛に身をゆだねたJulieは、そこに人生の新たな展望を見いだそうとするが…。第74回カンヌ国際映画祭で、Renate Reinsveは主演女優賞受賞。(作品の詳細



何がどんな感じに最悪なんだろう?と、タイトルに惹かれて観た。何者かになりたくて、常にもがいているJulie。けれど面倒くさがりで飽き性だから、何をやっても長続きしない。何をやりたいのか分からない彼女が、恋や仕事や自身の葛藤を通して、自分が進む道をみつけていく姿を描いている。人生に悩むJulieの等身大の姿が、印象的でした。


Julieを「最悪の人」と呼ぶのは、他人ではなくて彼女自身だ。気分屋で人を振り回し、何度も傷つける。性に奔放で、パートナーがいるのに、別の男と寝てしまう。何度も進路を変える。面白そうだと思えば、あっちへフラフラ、こっちへフラフラ。だけど、それって、最悪な事なのか?彼女はちょっとやりすぎで、暴走しすぎだけど、むしろ、そういうことは結構あるんじゃないかなと思う。



どの映像も綺麗で心に残っているが、時間が止まり、Julieがオスロを駆け抜けるあのシーンには、心ときめきました。恋に落ちた瞬間、そこは2人だけの世界。他のすべてが止まって、JulieEivindだけが動いている。恋に恋する人生最高の瞬間で、最高に輝いている。

けれどこの特別な感情も、関係が続けばいつかは消えて、普通の日々が待っている。そこから徐々に深い関係を築いていくのだけど、Julieはそれができない。新しい環境に、飛び込んでいきたい。天晴だ、あまりにもわがままで、正直すぎます…苦笑


そんな彼女にも、新しいステージの扉が開く。Akselの病室を訪ねたJulieに、「君は最高だよ」とかけた彼の言葉は、たぶん彼女が一番求めていたもので、だからガツンと心に響いた。ありのままの自分を、受け入れようとする。何者でもない自分を受け入れるのは、敗北ではなく、大人として一歩成長した証だと思うのね。



自分探しに身を投じる時期というのが、大なり小なり誰にもある。周囲を振り回したり傷つけたりして、自分自身を最悪と呪いたくなるような黒歴史を、幾つも作ってしまう。けれどそれは成長に欠かせない経験なのだ。

時間が目まぐるしく過ぎ去る中で、この映画は少なくとも、あなたが1人で悩み苦しんでいるのではないことを、教えてくれる。悩みを解決してくれるわけではないが、AkselJulieにしたように、この映画は心細く不安な私たちに、そっと寄り添ってくれるはずです。

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