スティーブ (Steve)

2026/04/04

【欧米映画】 Cillian Murphy Jay Lycurgo Tracey Ullman

 ネタばれあり!!! 


【あらすじ】 1996年代、イギリスの片田舎にある男子寄宿学校スタントン・ウッドは、非行少年たちの更生施設だ。しかし財政難や政治的な圧力によって、崩壊の危機に瀕していた。校長のSteveCillian Murphy)と副校長AmandaTracey Ullman)は、少ない予算と人手不足と薄給の中で、日々奮闘している。
 新学期の朝、Steveはいつものように早く校舎に向かった。その日は施設の所有者との重要な会合があり、また学校を取材するために呼ばれた、地元のテレビ取材班への対応で、張り詰めた空気に包まれた。追い打ちをかけるように、施設は売却され、半年以内に閉鎖されるという知らせが届く。
 次から次へと起こるトラブルに追われ、Steveは疲弊しきっていた。それでも少年たちに寄り添い、彼らの未来を守ろうとするが、彼自身もある問題を抱えているのだった。Max Porterの小説Shyをもとに映画化。(作品の詳細

 


Cillian Murphy
1人祭り。荒廃した施設を舞台に、校長を始めとするスタッフや生徒たちの、怒涛の1日を描いた舞台劇風の作品。
Cillianって、話している時はもちろんなんですが、台詞のない時のほうが、より雄弁に語るんですよね。自責の念に苛まれ続け、痛みを麻痺させてもがき苦しんでいる。表面上は穏やかだが、何かが静かに崩壊していく。この役どころは、彼の十八番ですね。 


オープニングから、ざわざわして落ち着かない。カメラの動きはほとんど止まらず、登場人物たちが花火のように現れ、とっ散らかっている。随所に出てくるタイムスタンプや、テレビ取材班がインタビューした、粗い画質のビデオクリップ、Steveが残している録音テープなど。

断片的なこれらの映像を、リアリティあふれるドキュメンタリーのように編集して、作品の随所に織り込むという、二重構造をみせている。それがさらに、不穏な空気や嫌な感情を引き起こして、視聴者は翻弄されっぱなし。イライラして精神的にとても疲れます。 


生徒の1ShyJay Lycurgo)は、知性と感受性にあふれた少年だが、家庭や社会から見放されて心に深い傷を抱え、自分の脆さや自滅・暴力への衝動の間で葛藤している。本当は誰かに甘えたい、優しくしてほしい。そんな彼と対話を試みる
Steveなんですが…。 


彼は真面目で熱心な校長であり教師だが、かつて
交通事故で少女を死なせてしまった、という大きな罪悪感を、心の底に抱えて生きている。この罪悪感や心の痛みを、薬とアルコールで押し殺しながら、まるで自らへの贖罪のように、少年たちを救おうと懸命に働いている。

けれども自分につきまとうこの罪悪感や、深刻な薬物乱用とアルコール依存を恥じて、そのことを誰にも打ち明けられない。一番ケアの必要があるのはSteve自身なのに、それを拒絶してしまっているんです。だから状況は、日々悪化するばかり。緊張とストレスで神経を擦り減らし、この日はもうギリッギリの崖っぷち。「Very very tired 


施設の精神科医でセラピストを演じたEmily Watsonは、温かさと共感力にあふれ、さすが精神科医だけあって、Steveの偽りの姿を見抜いていた。けれど悲しいかな、それ以上のことはできなかったのです。彼女は何とかしてあげたかったに違いありません。

それからSteveが最も頼りにしている教頭役のTracey Ullmanは、母性的な厳しさと深い愛情で、少年たちに寄り添う。彼女のブラックユーモアに、何度助けられたことか。彼女がいなかったら、この映画はあまりにも辛くてやり切れません。 


Steve
Shyは似た者同士のようにみえるが、決定的な違いがあった。Shyには自分の弱さをさらけ出し、他人に傷をさらけ出して痛みを解放する勇気があり、こちら側に引き返してきた。一方のSteveは心ここに在らず、かろうじて踏みとどまってはいるが、もはや限界を超えて、あちら側に一歩踏み込んでしまっている。

最悪のシナリオしか想像できないラストシーンに、「ああ、やっぱりそうなのか」とガックリ、やるせない思いになる。そんな彼に駆け寄って、「全部吐き出していいのよ」「私が話を聞いてあげる」「話したくないならそれでもいい。ずっとあなたのそばに居るから」と、Steveを抱きしめたい気持ちで、胸がいっぱいになりました。泣

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